自動動機理論という心理学の言葉があります。
 ある実験が行われました。2つのグループに不規則に並んだアルファベットのカードから特定の単語を見つけるというもの。
 1つのグループには「勝利」「達成」など前向きな言葉。もう1つのグループには「牧場」「シャンプー」など脈絡のない言葉が設定されました。
 そしてその実験の後、共通のパズルを解く問題を行ったところ、前向きな言葉を探していたグループが格段に良い成績となりました。
 前向きな言葉に触れることで無意識に意欲が高まり、その後の行動に積極性や集中力を生むという理論です。

 私たちは支援者として普段の言葉づかいには注意を払っています。それは数十年前に施設の利用者が〜ちゃん、またはあだ名で呼ばれたり、大人でも子ども扱いする言葉づかいになったり、ということがあり、それは人権侵害であり、虐待と捉えるべきとの考え方が生まれました。
 風の谷は18才以上の方が利用されていますので、特に一人の大人として接することを意識的に行っています。

 その際、言葉はそれを使う人の意識に直接作用することを実感する時があります。
 利用者さんから思わぬ反応があり、焦ってしまった時、体調やプライベートの影響でちょっとした声や行動にイライラしてしまう時、その方に合った支援方法が見つからず悩んでいる時などに敢えて丁寧な言葉づかい、口調を意識することで冷静な振り返りができたり、気づきが生まれたりしています。

 またナウシカのように暮らしを共にしていると自分が家族になったような錯覚から馴れ馴れしい態度に陥る危険性があります。そういった時に言葉を意識することは態度の修正や振り返りにつながっています。

 自身のモチベーションを保つだけでなく、支援者としての資質を向上させるためにも言葉を大事にする姿勢は大切なのだと思います。