『注意資源』という言葉があります。一定の事柄に注意が向き過ぎてしまうと別の事への注意が散漫になってしまうという考え方です。
 自閉症の方は素晴らしい集中力を発揮する面もありながら刺激に便感な面もあるため、注意がそれる場面があります。それを私たちはパーテーションやワークシステム、スケジュールといった注意を向けやすい状況、なるべく複数の刺激が混在しない環境を作ろうとします。
 その環境設定がその方に合っているかどうかは、実際にそのセッティングにしてみて記録を取り、確認することができます。

 こういったご本人に合った環境設定の方法を見つける事が日々の私たちの取り組みで繰り返されているわけですが、それがご本人にとってどういった得があるのか?ご本人はそれを望まれているのか?といった視点が大事になります。
 その視点がないと、極端な場合、スタッフが楽になるために工夫するという本末転倒が起きかねません。ですから支援方法を工夫する際には、何のために?とそれに応じた目標設定、どうなれば達成といえるのか?といったことを明確にすることが一番重要に思われます。

 目標達成ということについて、トップアスリートの達成の仕方が紹介されていました。
 それはABC3つの目標設定するというもの。
Aはベスト、これが出来るようになりたい。
Bはベター、ミスをしても良い、またはミスが予想される部分。
Cはワースト、このミスはしてはならない、または、この結果につながる方法は即座に変える。

 大抵、私たちはAの設定のみを行い、満点以外は全て失敗としてしまいます。その結果、目標達成どころか目標の設定そのものが辛くなってしまいます。
 アスリートが高いパフォーマンスを発揮するためには良い精神状態を保つことが重要なのは一般的になっています。ABCを準備しておくことで失敗のプレッシャーは低くなり、目標達成まで挑戦が続けられます。また、Bの結果が出たことで、よりAに対する意欲が増すことも考えられます。
 結果として質の良い練習につながり、技術の向上が得られることになります。

 自閉症の方は一点に集中する力が強い分、失敗経験を強く引きずる傾向があります。私たちの支援が皆さんにとって無理のない、ご本人のペースに合ったものかどうか考えることも重要なのだと思います。

 年末、今年の総括と来年の目標を考える時期です。来年の目標はABCで立ててみてはいかがでしょうか。N