『すぐに分かる薄っぺらい場所ではなく、奥行きのある世界に自分が身を置いている証』
 ある作家がインタビューの際に『分からない』と回答をもらったことを評価した言葉です。

 SNSの広がりに伴って一般人が作家になることが可能になっています。一定の読者を持ち、評価を受け、場合によっては収益化もできるツールが整っています。そうした中で『言語化』というのが1つのキーワードとして語られる場面が増えました。

 感情や行動、出来事を言語化、文章化することで人に伝えられるということと同時に自分の中での解釈を再確認するという役割があると私は考えております。

 そこで、自閉症の方に感情や表情の理解を深めていただくために表情のイラストにイライラやニッコリ、または楽しい、悲しい等の名前をつけて確認する方法を取ることがあります。

 ただ、冒頭に紹介した言葉から思うのは言語化することで意味が狭められる面もあるのではないかということです。

 私たちは日々、評価に基づいて支援の組み立てをしますが、それは日常の表情の変化や声のトーン、ちょっとした仕草から感じ取っているような場面は少なくありません。

 それを言語化することで説明しやすくなり共有化できるのですが、この仕事に携わらせていただく中で辿り着くのは『分からない』ということです。

 現在の評価に囚われず、分からなさを認識しながら、よりこの仕事の深みにはまっていきたいと思いました。