やまびこブログ~風の谷の徒然なる日々~

 法人の活動報告やイベント告知を中心に、スタッフが日々感じたことや自閉症の方の魅力、福祉の仕事の楽しさについて発信しています。

2017年11月

 見通しをもつことが得意でない自閉症の方が抱える不安が強くなる等のストレスを抱えた時に同一性の保持、いつも通りの行動や状況をつくって自らを安定させる、それがコダワリと呼ばれる行動です。
 
 ナウシカの皆さんも様々な場面でパターンをつくって日中活動で何かストレスがかかることがあっても安心できる状態に戻れるように独自のルーティンを持たれています。
 それが私たち職員との決まり文句のやり取りの場合もあり、そのやり取りが私たちにとっても利用者さんの状態を確認できる材料になっています。
 また、それがスタッフの側にとってもペースメーカーのような役割になっており、いつも通りのタイミングでいつものやり取りをすることで支援の手順も一定に保ちやすくなっており、私たちにとっても安心材料になっています。

 ここ1〜2週間、そのやり取りの内容が増えたり、それを行なうタイミングも増えたりする傾向が見られています。月末で新たな予定表が作成されることや更にその先には年末年始が控えているといったことが影響しているのではないかと考えています。
 年の瀬に向かい、忙しくなる時こそ、普段通りを心がけナウシカは皆さんがリセットできる安心の場所てありたいと思います。N

付記:
 この時期気持ちが忙しくなり事故が多くなります。こういった時期だからこそ敢えてゆっくり歩く、空き時間を多めに取ることが事故防止には一番良いそうです。

 ある職員との話。
「地域との繋がりをつくり、様々な形で地域住民として参加できる形を作りたい」
「今はもう社会参加じゃないんだ、社会貢献を考えなければならない」「どうしたら工賃が増やせるか、なんてのは古いんだよ」
 アメリカ、ノースカロライナでは州と大学が協働して自閉症児者の社会貢献を支援しているそうです。ある高機能の方は週3日仕事に行き、残り2日をボランティアで地域奉仕活動に参加しているとのこと。
 企業の社会的役割や責任が話題になって随分経っていますが未だ自社の利益、一部投資家の利益優先になっている世界の中で自閉症の方が今のグローバル社会に相応しい、自己の利益ではなく、地域の利益、長期的な利益を生む生き方を提示できるのではないかと思いました。
 そのためにも研鑽、思索、行動を積極的に繰り返してその支援に見合う力を発揮しなければならないと思いを新たにしました。N

 あるご家族の方とふとしたことから読書の話になり、本は良いよね、世界が拡がる、という話になりました。
 私もそれは同感で学生の頃は紀行もの、舞台がよく知らない地域のものばかりを読み、ルワンダやタイのルポで衝撃を受けることもありました。
 年齢を重ねたせいか外へ外へと向かい、現象面、行動面を追っていた思考が人の内面をじっくりと掘り下げるような作品を選ぶようになっています。
 簡単な感想を書き留める読書ノートが一冊終わり、見返したことでそのような自分の変化に気が付きました。
 このブログも一時期アクセスの少なさに閉鎖も考えましたがブログは何を考え、何をしようとしていたかの記録になるので続けること自体に意味がある、と言った同僚がいました。個人的な見解や思いつきばかり書いていますが、それでも当時の風の谷の取り組みを思い起こす材料にはなるのではないかと思います。
 先日、ちょうど読書について書かれた新聞記事があり、“様々な作品があるが、それらをどれだけ深く読めるかは自分自身をどれくらい深く見つめているかによる”とありました。
 表層的な関心がより内面に向かうようになったのは少し思慮が深まったと言えるのかもしれません。
 同様に利用者さんのちょっとした行動、反応に対する評価も大きく変わっているのだろうと思います。長くこの仕事に関わらせていただいている分、少し変わった見方を同僚に提案できると良いのかもしれません。
 そのためにも研鑽を積み続けていきたいと思います。N

 ナウシカでは食事が大きな比重を占めています。食事が楽しめるかどうかは、その日が楽しい日となるか、つまらない日となるかの分かれ道と言っても良いと思います。
 利用者さんごとに様々な注文や好みがあり、キッチンから運ぼうとした瞬間に「いらない」とテーブルに置くことすら許されない場合があります。
 ナウシカのスタッフが食事の準備をしている時のこと、朝食のおかずを予め作っておいて冷蔵庫に保管、朝、温め直して食べる形をとることが多いですが、おかずが肉の入ったもので時間が経つと固くなってしまうものや牛肉は臭みが出てしまったりすることがあります。
 そこでそのスタッフはフライパンで温め直しす際にむしろ少し焦げ目をつけるくらいによく焼いて出しました。すると一晩冷蔵庫に置かれた牛肉料理は残される事が多い利用者さんがすごい勢いで完食されていました。
 日中の接することのある利用者さんが念入りに火を通して食感を固めにしたほうが食べたことから試みたとのことでした。
 また、皆さん視覚的に分かりやすくすることで、より安心して食べられることが多いので炒め物など元は混ざっているものでも別々に人参、ピーマン、豚肉、キノコなど皿に4色に分けて出すことで苦手なものがないことが確認でき安心していただけます。同じように上記のスタッフはトーストに3種類のものを付けたい方にはマーガリン、ジャムと重ねて塗らず、写真のようにして出していました。
時々模様を十字にしたり、斜めにしたりと楽しみながら準備しているそうです。

 配慮したことが生きて喜んでもらえることが一番嬉しいですが、そこにスタッフ自身の遊び心を加えるのも大事なことなのかなと思いました。
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 ハーバードメディカルスクールの研究。75年間に渡って724名の被験者の追跡調査の結論は、"人生を最も豊かにするものは人間関係である"だったそうです。身近に良い関係の人がいること、すぐに相談できる人、話を聞いてくれる人がいるということがその人の生活に安心と活力を生み出すということだと思います。

 一口に人間関係と言っても様々な形があるでしょう。しょっちゅう会って話をしても肝心な悩んでいる部分は口に出せない、といった関係性は、現在ではむしろ多いのではないでしょうか?
 そんな中、ご自分の思いそのまま表現するのではなく、これまでの経験、知識からの強烈な規範意識に従って行動される自閉症の方は周りに安心して頼れる人がいる、と思っていただくことが難しいのではないかと考えてしまいます。

 風の谷の支援が、スタッフとの関係性だけではなく、安心や元気のもとになる身近な人の繋がりをつくっていけたら、こんなに幸せなことはないな、と思いました。N

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